概要
かつて、秋月電子通商で 32×16 ドットのマトリックス LED モジュール (型番: AD-501-B) が販売されていました。この LED モジュールの制御方法について説明します。
AD-501-B について
このモジュールには、16×16 ドット赤色ドット マトリックス LED×2、シリアル – パラレル変換 & LED ドライバー IC が実装されており、シリアル データを入力するだけで LED を点灯させることが可能です。モジュールの外観を以下の写真に示します (写真は AD-501-B とは異なるメーカー製の同等品です)。

AD-501-B は現在販売されていませんが、共立エレショップにて類似モジュールを入手できます (コネクタのピン アサインと LATCH 信号の論理が異なりますが、制御方法はほぼ同じです)。
AD-501-B には 11 ピンのコネクタがついていますが、ピン アサインは以下の通りです (S-IN、CLOCK、LATCH、STROBE 端子は 4.7 kΩ でプルアップされています)。
ピン番号 | 名称 | 備考 |
---|---|---|
1 | LED 電源 | 5 V 時 LED 1 個当たり約 30 mA |
2 | S-IN (IC1) | H で点灯、L で消灯 |
3 | S-IN (IC2) | H で点灯、L で消灯 |
4 | S-IN (IC3) | H で点灯、L で消灯 |
5 | CLOCK (共通) | 立ち上がりで S-IN のデータを読む |
6 | LATCH (共通) | 立ち下がりでデータを出力、H でデータを保持 |
7 | STROBE (共通) | L で点灯、H で消灯 |
8 | IC 電源 | 6 V (内部はツェナー ダイオードにより、5 V 動作) |
9 | NC | 未接続 |
10 | GND | 0 V |
11 | GND | 0 V |
点灯のしくみ
AD-501-B のブロック図を以下に示します。

SIN から入力される信号は、CLOCK の立ち上がりで読み込まれ、クロックの立ち上がりごとにシフトされます (ここで、シフト方向は D1 → D16)。つまり、シリアル データは D16 から順に入力しなければなりません。
LATCH を L レベルにすると、現在のシフト レジスタの値がラッチに読み込まれ、H レベルにすると、ラッチの値が保持されます。このラッチの出力が、LED ドライブ出力になります。
なお、CLOCK、LATCH、STROBE は IC1、IC2、IC3 共通接続なので、S-IN (IC1)、S-IN (IC2)、S-IN (IC3) は同時に入力してあげる必要があります。
例えば、以下のようなタイミングで信号を入力すると、IC1 の D16 のみが H、IC2 の D1 のみが H になるため、それらが交差する、左上隅の LED が点灯します。

全面を点灯させるには
先ほどの例では、1 個の LED を点灯させましたが、複数の LED を同時点灯させるにはどうすればよいでしょうか? 列方向については、IC2 と IC3 の D1~D16 に任意のデータを入力すれば点灯させられます。
さらに、文字などのように平面的なデータを点灯させるには、表示データを行単位に分解して、1 行単位で表示させます。
つまり、初めに 1 行目の表示データを IC2、IC3 に送り込み、IC1 の D16 のみを H にしてラッチします。次に、2 行目の表示データを IC2、IC3 に送り込み、IC1 の D15 のみを H にしてラッチします。これを 16 行目まで繰り返し、また 1 行目に戻ります。この処理を高速に行うことにより、人間の目の残像効果で全体が点灯しているように見えます。

このように、時分割で点灯させる方式をダイナミック点灯と呼びます。
よく、電車の先頭車両の正面写真で、LED の行先表示が一部切れて写っているものがありますが、これは上記のダイナミック点灯で 1 画面分表示する時間よりも、カメラのシャッター速度の方が速いため起こります。
補足
共立エレショップにて販売されている類似モジュールのピン アサインは以下の通りです。
ピン番号 | 名称 | 備考 |
---|---|---|
1 | VCC | ロジック部電源 (5 V) |
2 | SIN_1 | Row 側データ入力 (H で点灯、L で消灯) |
3 | SIN_2 | Col (A) 側データ入力 (H で点灯、L で消灯) |
4 | SIN_3 | Col (B) 側データ入力 (H で点灯、L で消灯) |
5 | CLOCK | 立ち上がりで SIN のデータを取り込み |
6 | LATCH | H でデータ更新、L でデータを保持 (※AD-501-B とは論理が逆です) |
7 | ENABLE | L で点灯、H で消灯 |
8 | VLED | LED 駆動電源 (5 V) |
9 | GND | 0 V |
10 | GND | 0 V |
参考文献
- AD-501-B データシート、秋月電子通商
- 32×16 ドット マトリクス LED モジュール データシート、デジット